歯医者が考える”口腔内に生じる力をコントロール”する重要性

 これまでの歯科医療従事者の啓蒙活動により、国民の大変がう蝕や歯周病の予防の観点からプラークコントロールの重要性について理解しています。また、ブラッシングやフロッシングはもはや生活の一部になっていると思います。しかし、過大な“力”が生じることで顎口腔領域にさまざまな為害作用(歯周病の進行、顎関節症の発症など)が生じることについては、十分な理解が得られているとはいえません。わが国には古くから「歯を食いしばって頑張る・耐える」といあった言い方があるように、歯を食いしばる・噛みしめることに肯定的な文化があります。また、「口をポカンと開けて」といった表現には、ネガティブなニュアンスがあります。さらに、睡眠中の“キリキリ”という歯ぎしり音は不快ではありますが、それが本人の口腔の健康を損なっていることを理解している方はむしろまれです。その1つの大きな原因として、う蝕や歯周病の原因であるプラークや歯石と違い、“力”は可視化することができない、直接目で見ることができないことがあげられます。「う蝕にも歯周病にも罹患していないけれど、犬歯が咬耗して平らになってしまった」「象牙質が露出し歯がしみる」「手間とお金をかけて治療を受けたのに、ほどなくセラミックスがかけてしまった」「歯の根がおれて抜歯になった」など、“力”の問題を軽視して不運な結果をうまないためにも力のコントロールすることが大切と思われます。