睡眠時ブラキシズムの管理(スプリント療法:歯を守り、歯周病の進行や顎関節症の症状緩和を図る装置)

 多くの場合、睡眠時ブラキシズムの管理としてスプリント療法が標準的に行われます。具体的には、歯医者さんで歯列の型取りを行い模型を作成し、この模型上でスプリントと呼ばれるマウスピースのような形態の装置を製作します。そして、この装置を患者さんに睡眠中に装着してもらいます。現在、睡眠時ブラキシズムへの治療法として保険適応されているのはスプリント療法のみです。ちなみに“スプリント”とは、医科では“骨折などにもちいられる添え木”のことをいいます。ほとんどの患者さんにおいて、スプリント装着後、睡眠時ブラキシズムの頻度は減少します。つまり、スプリントには睡眠時ブラキシズム抑制効果があります。しかし、2週間程度の継続使用により多くの場合、睡眠時ブラキシズムのレベルは元に戻ってしまいます。継続使用されているスプリント上に著しい咬耗が生じたり、スプリントに穿孔、破折等が生じるといったことはまれではありません。それでもスプリントが標準的な治療として用いられるのは、顎口腔領域を睡眠時ブラキシズムの力からまもることができ歯周病の進行や顎関節症の症状緩和をはかれるからです(歯科においてはこの力のコントロールが非常に大切になります)。

スプリントの役割1:短期的抑制効果

 前述のように、スプリントの装着により短期的には睡眠時ブラキシズム抑制効果が期待できます。この点は非常に重要です。一方、スプリントに長期的な継続使用による抑制効果の消失は、スプリントへの慣れによるものと考えられています。患者さんにスプリントを間欠的に、ある程度の間隔を空けて使用してもらうこと、中止期間中に慣れがリセットされ再度、抑制効果が期待できます。患者さんの症状によっては、こうした性質をうまく利用することができます。たとえば、顎関節症患者さんで起床時のロック(お口があけにくい)を間欠的に繰り返しているような患者さんに対しては、症状の出現に合わせてスプリント療法を適用することで、症状を軽減させることができます。

スプリントの役割2:長期的な保護効果  

 長期的な継続使用によりスプリントの睡眠時ブラキシズム抑制能は徐々に失われ、再びスプリント上で睡眠時ブラキシズムが行われるようになっても、スプリントを装着し続けることにより、歯や補綴物(被せ物)を保護することができます。たとえば、グラインディング(歯ぎしり)が起こると歯や補綴装置は摩耗しますが、スプリントを装着していれば歯列が保護されるばかりでなく、摩耗は対合する歯や補綴装置ではなくスプリント上に生じます。したがって、スプリントは歯や歯冠修復物により摩耗しやすく、柔らかい材料で製作されます。その結果、穿孔や破折が生じることもありますが、常温重合レジンを添加することにより、スプリントの修理・調整は簡便かつ安価に行うことができます。

 ブラキシズムで悩まれている方は一度、歯医者さんでご相談されてみて下さい。