歯科(歯周病)と全身疾患の関わりについて

歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、みなさんご存じのように歯の周りの歯ぐきや歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。

歯と歯肉の境目の清掃が行き届かないでいると、そこに多くの細菌が停滞し歯肉の辺縁が炎症を起こして赤くなったり、腫れたりしますが痛みがほとんどのないのが特徴でサイレントディジーズ(静かなる病気)と呼ばれています。さらに進行すると膿がでたり歯が動揺してきて、最後には歯を抜かなければならなくなってしまします。

近年、8020運動のおかげで、歯の保有状況が良好になってきたことから、歯周病に罹るリスクを有する歯が増えてきています。

そのような歯周病は全身的な疾患に悪影響を及ぼしたり、その逆に全身性の慢性炎症性疾患が歯周病を増悪させることが数多くの研究で証明されています。

そのメカニズムは歯周病細菌が歯肉に攻撃を仕掛けて身体の中に侵入しようとします。身体は菌をやっつけて侵入を抑えようと攻撃します。これが、歯周病のはじまりで、歯肉からの出血・発赤・腫脹の炎症が生じます。この炎症により歯周ポケットには潰瘍が形成され、潰瘍部から歯周病細菌や炎症物質が血管の中に入り全身を駆け巡ります。これにより様々な病気を引き起こしたり悪化させる原因となります。炎症性物質は、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くさせたり(糖尿病)、早産・低体重児出産・肥満・血管の動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞)にも関与しています。

また、歯周病菌のなかには、誤嚥により気管支から肺にたどり着くものもあり、高齢者の死亡原因でもある誤嚥性肺炎の原因となっています。歯周病菌のひとつP.g菌(Porphyromonas gingivalis)がもつ“ジンジパイン”というタンパク質分解酵素はアルツハイマー病悪化の引き金をもつ可能性が示唆されています。

歯周病は歯ブラシ一本で予防する事が可能な病気でもありますので、かかりつけの歯医者さんと共に歯周病の予防・治療を行うことで、全身の様々な病気のリスクを下げる事が可能です。日々の歯磨き・口腔ケアを見直し全身の健康につなげましょう。