ドクター
先天性無歯症患者の欠損歯の再生「歯が生えてくるお薬」について西明石駅(大久保駅)近隣の歯医者がご紹介します。
2024年5月上旬、生まれつき永久歯がない「先天性無歯症」の患者の歯を生やす「歯生え薬」について、人への安全性を確かめる臨床試験(治験)を2024年9月ごろ始めるとの発表がありました。この話題はyahooニュースや民放でも放送があったのでご存じの方も多いかと思います。
これに先駆け2024年4月14日、医学研究所北野病院歯科口腔外科の高橋克主任部長(トレジェムバイオファーマ株式会社共同創業者取締役最高技術顧問)が「希少疾患先天性無歯症患者の欠損歯を再生する新規抗体医薬品の開発~「歯生え薬」の研究開発にかけた30年~」と題して講演があったようです。
研究の概要や経緯、展望は以下のようになっています。
まず先生性無歯症とは
先天性無歯症は、大きく無歯症以外の症候を伴う症候群性無歯症と無歯症のみが認められる非症候群性無歯症に大別される。通常6本以上の歯の欠如を認める症例が遺伝性とされ、その発症頻度は全人口の0.1%と報告されています。症候群性先天性無歯症の代表的な疾患である無汗性外胚葉形成不全症(EDA:Ectodermal Dysplasia Anhydrotic)は、デンマークの報告では、10万人出生あたり15.8人と希少疾患に該当します。
先天性無歯症の原因遺伝子としては、EDAに加えて、MSX1、WNT10A、PAX9、RUNX2等が同定され、その多くの原因遺伝子がマウスとヒトで共通であります。
非症候群性無歯症で最も頻度の高い原因遺伝子はWNT10Aで、人種差はあるものの、その頻度は遺伝性無歯症の20~50%になります。先天性無歯症患者は、顎骨の発達期である幼少期から無歯症となるため、義歯や歯科インプラントの適応が困難である。また、成長期にオーラルフレイルの状態となり、栄養確保や成長に悪影響を及ぼす。成長期に歯が欠如しているため、歯を支える顎骨も委縮し、多数歯欠損症例では成人期後に顎骨再建を含めた長期に渡る専門的な治療を必要となります。
既存治療としては成人以降に義歯や歯科インプラントによる人工歯を用いた代替治療を施工するしかなく、根治的な治療として歯の再生治療の開発が強く望まれていました。これまで組織学的な手法による歯の再生研究が数多く試みられてきたが、細胞リソース、コストや安全性などの問題で臨床応用までには至っていない現状がありました。そんな中、今回の研究により歯を生えさせる薬が開発されました。
研究開発の経緯
高橋氏の研究グループでは、USAG-1タンパク(BMP/Wntのアンタゴニスト)の遺伝子欠損マウスにおいて、過剰歯を形成することを見いだし、1週類のタンパク分子により歯の数を増やすことができるとを明らかにされた。また、各種先天性無歯症モデルマウスと過剰歯モデルマウスのUSAG-1遺伝子欠損マウスの交配により、歯の形成が回復することを見いだされた。さらにUSAG-1siRNAを先天性無歯症モデルマウスに局所投与することで、先天欠損歯を回復できることを示し、先天性無歯症に対するUSAG-1の標的妥当性を明らかにされた。そこで、USAG-1を標的分子とする中和抗体を作製した。USAG-1はBMP/Wntシグナルのアンタゴニストであり、その機能ドメインが異なるため、その中和抗体は、BMP、Wntシグナルをそれぞれ活性化する、または両者を同時に活性化する3種類に分類された。それらの抗体のBMP、Wntシグナルに対する活性化様式の違い、抗原認識部位の違いを考慮して、5個の中和抗体に絞り込み知財を取得され、その知財をもとに、研究成果活用事業として2020年5月にトレジェムバイオファーマー株式会社を設立された。USAG-1蛋白は、ヒト、マウス、ビーグル犬等の異種動物間で97%の高いアミノ酸相同性を有している。そのため、マウス抗USAG-1抗体は、先天性無歯症モデルマウス・ビーグル犬において単回腹腔内投与/静脈内とよにて欠損歯を回復できることを明らかにされた。in vitoro/in vivo活性、予備毒性試験より、ヒト抗USAG-1抗体の最終開発候補物TRG035の決定となった。
現状
PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)のレギュラトリーサイエンス戦略相談(RS戦略相談)、対面助言にて治験実施に必要な安全性試験、薬物動態試験、薬効薬理試験項目を確定し、前臨床試験を実施された。現在Phase1試験に必要な非臨床試験およびPMDA対面助言を完了し、Phase1試験のプロトコール骨子を確定した。トレジェムバイオファーマ株式会社、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)京都大学病院および医学研究所北野病院との産官学の連携により、PI試験を実施し、TRG035のヒトにおける容認性、寛容性を確認し、至適投与量を同定している。
展望
TRG035を先天性無歯症患者の治療薬として、有効性安全性を確立し、臨床応用への道筋をつけることを目指されています。将来的には一般の欠損歯に、永久歯の後継歯(第3生歯)を形成させることにより適応拡大し、未病対策として健康寿命の延伸につなげることを目指されています。先天性無歯症の治験の詳細な情報や問い合わせの方法は、医学研究所北野病院の特設ページ(http://www.kitano-hp.or.jp/info/20240503)で紹介されています。
今後、このお薬の臨床試験が順調に進み、一般的な治療法になる事を期待して待ちたいと思います。
明石市 最寄り駅「西明石駅」「大久保駅」の歯医者「のむらファミリー歯科」が紹介させて頂きました。