ドクター
3歳未満の歯磨きについて為になるお話し(小児歯科)を西明石駅が最寄り駅の歯医者「のむらファミリー歯科」が解説します。
乳歯(子供の歯)が萌出し始めたら少しずつ仕上げ磨きを行うことを歯医者さんでは指導していきます。3歳になるまでの時期はおとなしく横になって口を開け、仕上げ磨きをさせてくれる子どもは少ないと思います。とくに初めのうちは、まだお口の中を指や歯ブラシで触れられることに慣れておらず、感覚が敏感とされる前歯部あたりを触れられることに拒否感を示しやすいとされています。
また、1歳半ごろからは、自分の気持ちを優先し、興味のある方向ばかりを向いて行動したがるようになり、保護者にいろいろとしてもらうことに反発を示すようになります。いわゆる第一次反抗期(イヤイヤ期)と呼ばれる時期に入り、自分で歯磨きをすることには積極的になりますが、仕上げ磨きをされることに対しては反抗的になりやすいとされています。
第一次反抗期は、自己主張と自己抑制のバランスがとれるようになる3歳ごろまで続くとされていますが、始まりにも終わりにも個人差があることから、仕上げ磨きを嫌がる時期が、子どもによって短かったり長かったりすることも、お父さん・お母さんや指導する歯医者側も理解する必要があります。
しかし、仕上げ歯磨きを嫌がるからといって、仕上げ磨きを行わない、もしくは不十分・不適当な状態が続くと、歯面へのデンタルプラークの停滞からう蝕の発生をもたらす可能性が高まることは容易に想像がつくかと思います。3歳未満における歯科治療が、子どもにとって精神的・身体的ストレスが非常に大きいことを考えると、お父さん・お母さんに毎日の仕上げ磨きの必要性を理解してもらい、持続できる効果的な仕上げ磨きを助言・指導することが何よりも大切であると考えています。
ブラッシングの効率性が高いという点において、子どもを仰向けに寝かせ、頭を保護者の膝の上に乗せて行う「寝かせ磨き」が仕上げ磨きの基本であります。なかには「仕上げ磨きのとき、なかなか子どもが寝てくれないので立ったまま行っている」というお父さん・お母さんがいらっしゃいます。しかし、立ったままの子どもの口をお父さん・お母さんが覗き込む姿勢では、とくに上顎の歯を磨く際に歯ブラシが適切な場所に当たっているかわかりづらく、子どもの頭が動きやすいために歯ブラシを安定して歯面に当てることが難しいと思われますので、せっかく行っている歯磨きが不十分になることが懸念されます。
基本的には「寝かせ磨き」を指導させて頂いております。なお、子どもが嫌がって動く場合は、お父さん・お母さんの両脚で子どもの肩が動かないように固定すると安定しやすいので試してみてください。
歯が萌出したばかりの時期は、まだお口の中に触れられる刺激にも慣れていないため、急に口腔内の感覚が過敏な部分に触れると不快に感じる場合があります。とくに上唇の裏側にある上唇小帯付近は痛点が多く感覚が過敏な部分であることから、触れられるのを嫌がりやすいです。そのため、歯磨き開始の前準備として、お父さん・お母さんの指で口唇周囲から徐々に口腔内に触れる。また、最初は感覚が敏感な部分を触るのを避け、頬粘膜、臼歯部の歯槽堤などから順次触れて、なれさせること(脱感作)が重要であります。
歯磨き開始の導入としては、慣れることを目的に水で湿らせたガーゼや綿棒を使用するのも有効であり、少しずつ仕上げ磨き用歯ブラシでの仕上げ磨きへ移行し、上顎乳切歯が萌出するころまでには歯ブラシを使用して磨けるようにしましょう。
とくに就寝時は、大人と同様に日中に比べて唾液分泌量が少なくなり、お口の中の自浄作用が低下して酸性へと傾きやすくなります。そのため、就寝前の歯磨きはむし歯予防に非常に効果的であります。卒乳し食事や睡眠の生活リズムが整う時期には、就寝前の仕上げ磨きの習慣がついていることが望ましいです。
歯磨きについての意識や技術を獲得することは、子どもの健康な口腔を目指す際の基本事項であります。獲得した意識や技術を維持向上するためには、食生活指導や専門的口腔ケアと併せて、乳児期からかかりつけの歯医者さんで定期的なチェックと指導のフィードバックを受けるようにしましょう。
以下に、3歳未満の子どもにおける一般的なブラッシング指導のポイントを紹介しますが、実際の指導の場面では、お子さんのお口の状況やお父さん・お母さんを含めた家庭環境や生活習慣に合わせて、一張一弛にアレンジすることが大切と思っています。
どのような磨き方がお子さんとお父さん・お母さんにとってよいか
- 乳切歯萌出期(5~12カ月ごろ)の磨き方
お口を触れられる感覚に慣れることから始め、徐々に歯ブラシを使った歯磨きに慣れさせていく時期であります。導入として、水で湿らせたガーゼや綿棒、赤ちゃん用歯磨きシートを用いての清拭が有効ですが、乳切歯が生え揃ってくると、歯間などは清拭だけではデンタルプラークの除去が不十分になりやすいので注意が必要です。
この時期のう蝕好発部位である上顎4前歯の萌出がみられたら、仕上げ磨き用歯ブラシを使用した口腔清掃を始めるように指導しています。歯ブラシは歯面に垂直に当てて軽い力で横(近遠心)方向に優しく動かします。また、お父さん・お母さんが渋顔で磨いていると子どもにも伝わってしまうため、穏やかに声をかけたり、アイコンタクトしたりしながら磨くように心がけましょう。萌出している歯が少ないため、できるだけ短い時間で終わることも大切であります。
さらに、この時期は上唇小帯が高位付着していることが多く、仕上げ磨きの際、上唇小帯部に不用意に歯ブラシが当たると痛がらせてしまいます。その結果、子どもが歯磨きを嫌がるのを増長させてしまいますので注意しましょう。そこで、歯ブラシを持たないほうの人差し指で上口唇を持ち上げると、上唇小帯部に歯ブラシの毛先が当たらず、歯にしっかり当たっているのを確認できます。
フッ素化合物歯磨剤については、この時期から積極的に使用してほしいと思います。具体的な使用方法としては、900~1,000ppmFの歯磨剤をごく少量(米粒大)使用したブラッシングを、就寝前を含めて1日2回行なうことが推奨されています。
- 乳臼歯萌出期(1~3歳ごろ)の磨き方
引き続き、上顎乳前歯部の平滑面う蝕への注意が必要な時期であります。それと同時に、新しく萌出する乳臼歯の小窩裂溝う蝕に対しても注意が必要な時期である。平均的に第1乳臼歯は1歳4か月ごろから、第2乳臼歯は2歳4か月ごろから萌出してきますが、乳臼歯の萌出状況には個人差があります。お子さんのお口の中を確認し、乳臼歯の咬合面が見えるようになったら、歯ブラシの毛先を乳臼歯咬合面にも軽く当て、小刻みに動かすように指導しています。就寝前の仕上げ磨き習慣の確立や適切な仕上げ磨き用歯ブラシの使用方法なども確認させて頂いています。
この時期から、子どもは自分で歯ブラシを持って歯磨きをしたがるようになりますが、歯を磨くというよりも口に入れて噛んだり、しゃぶったりして遊んでいる場合が多いです。そのため、乳幼児本人が使用する歯ブラシは安全に配慮されたものがよく、また噛んで歯ブラシの毛先がすぐに傷んでしまうことから、本人用と仕上げ磨き用歯ブラシを分けることをお勧めしています。
仕上げ磨きはペングリップで歯ブラシを把持し、毛束を歯面に対して直角に(舌側は直角に当てることが難しいため45度に)当て、横(近遠心)方向に小刻みに毛先を動かす「スクラビング法」が効果的かつ実施しやすい方法として推奨されています。
この時期もフッ化物配合歯磨剤を積極的に使用してほしいです。2歳までは十分なうがいができないことから使用量はごく少量(米粒程度)とし、仕上げ磨きの後にティッシュなどで歯磨剤を軽く拭き取ってもよいと思います。3歳以降はグリーンピース程度の量を使用の目安とし、歯磨きの後に歯磨剤を軽く吐き出すようにしてください。小児用歯磨剤にはいろいろな種類の甘みフレーバーがついており、子どものお気に入りを見つけることで歯磨きのモチベーションが上がることも期待できます。
●子ども用歯ブラシの選び方
歯ブラシの選択にあたっては、デンタルプラークの除去効果、口腔内での操作性や口腔組織を傷つけないことなどを考慮し、口腔の成長に合った歯ブラシを選択します。
乳児用歯ブラシ
乳児本人が持つ歯ブラシは、口に入れて噛んだり、しゃぶったりすることで歯ブラシに慣れることを目的としているため、安全性に配慮されたものを選択てください。基本的にブラッシング効果は期待しないため、慣れ親しみやすいよう工夫されたゴム製の歯ブラシや、おもちゃ型の歯ブラシなどを使用してもよいと思います。
幼児用歯ブラシ
1~3歳ぐらいまでは、幼児の手に合わせて握りやすいよう把柄部が太めで短いものが適当と思います。この時期の歯ブラシの持ち方はパームブリップでブラッシング圧の加減ができないため、市販の幼児用歯ブラシの毛の硬さは歯肉を傷つけないように「やわらかめ」「ふつう」がいいでしょう。
仕上げ磨き用歯ブラシ
乳幼児用歯ブラシは幼児用が使用しやすい工夫がされているが、それが必ずしも仕上げ磨きに適しているとは限りません。仕上げ磨き用として市販されている歯ブラシは、頭部が小さく毛丈は乳幼児用より1~1.5mm程度短い、お口の中が見やすいように頸部が長い、お父さん・お母さんが把持しやすいように把柄部が太めで長いといった特徴があります。仕上げ磨きに適した歯ブラシを選択するとデンタルプラークの除去効果も高いことから、普段、お父さん・お母さんがどのような仕上げ磨き用歯ブラシを使用しているかについても歯医者では確認をしています。
子ども用歯ブラシも、長期間使用していると刷毛の弾力性が落ちて清掃効果が低下することや、植毛部に食渣や歯磨剤が残留して不潔な状態になりやすいため、定期的に新しいものに取り換えることをお伝えしています。歯ブラシの取り換え時期は磨き方や製品の種類などによって異なるとされれていますが、一般的に推奨される1か月に1度の取り換えを目安に、歯ブラシの後ろから見て柄から毛がはみ出していたら取り換えるといいでしょう。
★歯ブラシによる事故
1歳を過ぎるころは一人で立ち、歩くことができるようになるものの、まだ相対的に頭が大きく、運動機能も未熟なために転倒による口腔外傷が起こりやすい時期である。乳幼児が歯ブラシを口に咥えたまま転倒すると、歯ブラシが口蓋や咽頭、頬などの粘膜を突き刺す重大な怪我に繋がることがありますので注意が必要です。
消費者庁が2021年に報告したデータによると、2016年~2021年までに歯ブラシが原因で受傷した例は120例報告されており、そのうち3歳以下の事故が104例(0歳児:1例、1歳児:48例、2歳児:32例、3歳児:23例)で、とくに1~2歳児に多い。事故のうち2/3は通院や入院が必要となる大きな怪我であることから、日ごろから注意が必要であります。
対策としては、3歳以下の乳幼児が一人で歯磨きをするときはソファーのような不安定な場所は避け、お父さん・お母さんの見守るなかで座って行いましょう。歯磨き事故防止機能の付いた歯ブラシを使用し、歯磨き以外で歯ブラシを持たせないようにしましょう。日本小児歯科学会のホームページからは、「家族みんなで歯磨き習慣」がダウンロード(https://www.jspd.or.jp/common/pdf/hamigaki.pdf)できるため、参考にしてほしいと思います。
最寄り駅が西明石または大久保駅の歯医者「野村ファミリー歯科」院長:野村昌弘